不安について② ~不安の「利点」とは?~ #5
前回は多くの方を悩ませる不安の正体についてお話ししました。
それにより、「不安」は人間が人間として生き延びていくために身体に刻み込まれた、絶対に欠かすことのできない大切な「反応」であることを、ご理解いただけたかと思います。
今回は、その不安のもう一つの側面である利点についてお話していきます。
2.不安の利点
例えば、あなたが資格試験を受検しようと決意した、と想像してください。
その受験日が来年の今頃であるならば、あなたにはまだ1年の期間があります。
この状況ですと、あなたに不安感はほとんどないため、心はかなり落ち着いています。
そのため、ややもすると勉強中に他のことに気をとられてしまって、集中することが難しいかもしれません。
それどころか明日模擬テストが控えていたとしても、もしかしたら教科書も開かないなんてこともあるかもしれませんね。
当然、模擬テストの結果は惨憺たるものとなってしまいます。
このように「不安感の不足するリラックス状態」で成績を上げるというのはなかなか難しいことになります。
その後、順調に準備を進めて受検日の3か月前くらいになると、緊張感がほどよく高まってきています。
すると集中力は高まり、記憶力や問題解決力も上がってきますから、勉強の効率は格段に上がります。
活動の効率を良好にする状態とは、ある程度緊張はしているけれど自分を保っていられる「適度な不安状態」といえそうです。
つまり、「適度な不安」が集中力を高めて活動の質を上げてくれるため、良い成績も取ることができるのです。
では今度、試験の直前になって不安が高まりすぎたらどうなるでしょうか。
鉛筆を持つ手は震え、配られたプリントに自分の名前を書くことすらできません。
不安はますます募りますから、やがて設問が何を意図しているのかも読み取れなくなってしまったり、しっかり暗記していたはずのことでさえ思い出せなくなってしまったりします。
注意力が低下して、普段であれば考えられないようなケアレスミスを引き起こすかもしれません。
このように「過度な不安」は集中力を散漫にし記憶も曖昧にしてしまうため、その結果、成績を下降させてしまうのです。
以上のことから、成績や作業効率を上げるためには「適度な不安」の存在が必要不可欠と言えます。
「過度な不安」はもちろんですが「不安の少ないリラックスした状態」でも、良好な成績は期待できなくなります。
不安障害やうつ病の方、あるいは不安になりやすい傾向にある方は、とかく不安を恐れがちなため、本来なら活動の効率を高めてくれるレベルの不安までも極端に恐れてしまいます。
不安の症状にばかり関心が集中し、不安に歯止めが効かなくなくなり、逃げ出したくなるほどの恐怖に駆られてしまうのです。
どれほど苦しいことでしょう。
ですから、そうした苦しみから自分を解放して楽に生きるために正しい不安の理解は重要であり、必須です。
不安は絶対になくなりません。
そして、「適度な」不安は成績や業務効率を上げ、QOL(生活の質)の向上に寄与します。
不安は、私たちが健全に生きていくために必要不可欠な、大切なものなのです。
だからどうか、不安を過剰に恐れたり、「不安をなくす。ゼロにする」なんて不可能な高すぎる目標を自分に課さないでくださいね。
不安と上手に付き合いながら、人生を生きやすいものにしていってほしいと、心から願っています。
次回は、カウンセリング場面で習得していただいている不安への対処法について、ご紹介します。
お楽しみに。
一人でも多くの人が「自分の人生」を楽に、楽しく生きていけますように。
一人でも多くの方の、心からの笑顔が見たいと願っています❀