ブログ

不安について① ~不安の「正体」とは?~ #4

2021年04月15日

 

初回のカウンセリング終了時に、クライエントさんに「今後、どうなっていきたいですか?」と質問すると、多くの方が「不安をなくして、楽に生きられるようになりたい」と答えます。

様々な失敗体験や悲しい経験によって過去を悔やみ、未来を不安に思って来ているのですから、
この思いは至極当然のことだと思います。

 

ですが、この「不安をなくす」というのは、実は誰にも達成できない不可能な目標です。
不可能なのですから、それを掲げたままでは、達成できない自分を責めるだけでなく、自己評価をますます下げていってしまうことにもなりかねません。


また不安には、いったん心の中に生まれると「どうにかしなきゃ」の思考を栄養にして、すくすくと大きく育ち、やがて「症状」というお友達まで連れてきてしまうという性質があります。
けれど「不安でもいい。不安はあって当たり前だから」と受け入れてあげると、成長することなく、しぼんで小さくなっていってくれます。

ですから、不安の正体を正しく知って理解すること。
その上で、目標を達成可能な現実的・具体的なものに設定しなおすことが、治療や回復のためにとても重要です。
継続していくための大切なモチベーションにもなってくれます。

 

そこで「ゼロにしたい」と願いがちな不安に関する2つのこと(①反応 ②利点)を、できるだけわかりやすく説明していこうと思います。


1.戦うか逃げるか反応(闘争/逃走反応)

私はいつも「太古の昔、人間が狩猟民族だった頃」を例えとして、以下の絵を描いて説明しています。

お見苦しい棒人間と線描マンモスになってしまっていて、いつも笑われていますが、
こればかりは、いかんともしがたく。。。
どうぞご容赦ください(汗

 

f:id:rakuneko-naga:20200329183215j:plain

 

そのころ、人間は集落を作って生活していました。
マンモスを1頭倒すと、その集落の何日分の糧になったのでしょうか。

とにかく、男たちは石斧などの武器を抱えて、マンモスをしとめようとしました。
野に出てマンモスの群れを見つけると、ある1頭に狙いを定めます。
すると彼らは、呼吸を荒くし、心拍数を上げ、手に汗を握り、筋肉をギュッと緊張させ…
「今だっ」と一気に襲いかかりました。

あるいは、そうやって襲いかかっていくものの、タイミングを間違えば、人間がマンモスの反撃に遭うかもしれません。

ですから、呼吸が荒く、脈は走り、筋肉がギュッと緊張していれば、たとえタイミングを逸して逆に襲われそうになったとしても、すばやく退散することもできました。

 

しかしこれが、もしも呼吸は穏やかで、脈も静かに打っていて、筋肉はだらっと弛緩していたとしたら、どうだったでしょうか。

狙いを定めても、その場所に着いたときにはマンモス達は遠く彼方まで逃げ延びていたでしょうし、
あるいは逆に襲われるようなことになったとしたなら、まんまとマンモス達にやられて消えてしまっていたかもしれません。

 

ここで気づいてほしいのが「呼吸が荒く、脈も激しく打っていて、手に汗をかき、筋肉がギュッと緊張している状態」です。
これはまさに『不安緊張状態』のことですね。

また、他方の、穏やかで弛緩した状態。これは『リラックス状態』を示します。

 

つまり、私たち人間はこのような『不安緊張状態』=『戦うか逃げるか反応』を備えてきたからこそ、現代まで生きながらえることができたのです。
リラックス状態だけであっては、どこかで淘汰され、人間が現在も生きていることはなかったに違いありません。

このように「不安」とは、人間がその生を全うし次に続けていくために、身体に刻み込まれた、重要で必須な「反応」だったのです。

 

いかがでしたか。

「不安は絶対になくならない。不安は生き延びるために必要不可欠なもの。だから、無理に不安をなくそうとしなくてもいい」
と理解してもらえたなら幸いです。

 

次回は、2.不安にもある利点 についてお話しします。
お楽しみに。

f:id:rakuneko-naga:20200329220921j:plain

一人でも多くの人が「自分の人生」を楽に、楽しく幸せに生きていけますように。
一人でも多くの方の、心からの笑顔を見たいと願っています❀

  |