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自分で認知行動療法② ~『生活リズム表』でセルフモニタリング~ #9

2021年04月24日


うつ病の症状は、次の4つの領域に分けることができます。

①気分:抑うつ、悲哀、不安、焦燥、怒り、イライラ、億劫感

②行動:興味・集中力・意欲・気力を失うため、動くことが苦痛で何もできない
③思考:些細なことへのこだわり、悲観的な考え、自責の念、希死念慮

④身体:倦怠感、易疲労性、不眠、食欲低下、性欲減退、頭痛、口渇、動悸、吐き気

 

以上のような様々な症状により、日常生活は元気だった頃とは比べものにならないほど制限されてしまいます。
その制限=できなくなったことは、あくまでも「症状」です。

決して自分を責める必要などないのですが、これらの症状は目に見えないものですから、否定的なジャッジばかりを下しては、自分をどんどん追い込んでいってしまいます。

また、行動や身体症状は、感じ方と連動しています。
私たちはうつ病でなかったとしても、激しく落ち込むような出来事を体験すると、興味や意欲がなくなって、何もする気が起きなくなったり身動きが取れなくなったりします。
ですから、どんなことをしているときに気分がどのように動いたのか、あるいは、睡眠時間の違いによって生じた気分の差異はあったのかなどを記録しておくことは、とても意味のある大切なことなのです。

 

 

■毎日『生活リズム表』を記入する

「いま」の生活を把握する
リワークでは当たり前に使用するツールですね。

写真では、水色/睡眠、黄色/仕事、黄緑/ごろごろ、青丸/食事、赤丸/服薬となっています。
このように、自分の好きな色や記号を使って、その日の行動を記録していきます。f:id:rakuneko-naga:20191129124551j:image

カウンセリングでは、前回から今日までの過ごし方を丁寧に伺います。

二人で一緒にこの表を俯瞰して眺めながら、何か起こった出来事があればそれについて話し合います。

もちろん、良いとか悪いとかのジャッジはしません。

 

②「気分」を具体的に把握できる

右端に細い4つの列がありますが、ここに気分を測定して記入します。

この、気分を客観的に測定することを『スケーリング』といいます。

上に小さく括弧書きしてあるとおり、5段階で測ります。

ここで用いるスケール(ものさし)は、あくまでもあなた自身のものであり、人と比べる必要はありません。

自分のものさしで考えてみてくださいね。
ものすご〜くイイ気分なら、5
まったくヒドイものなら、1
「フツウ」は、3
自分のものさしなんですから、正しいも間違いもありません。
最低でも1日に1度、そのときの気持を振り返って、感じるままにつけてみてくださいね。

③「変化」が把握できるようになる

うつ病と診断されたほとんどの人の生活リズムは乱れています。

その乱れっぷりは大きくて、乱れているほどいいと、私は思っています。

生活リズム表は、クライエントさんの日常生活が一目瞭然です。
語る以上に雄弁に伝わってきますから、そのつらさや苦しみを理解して共有することを可能にします。

また、診察やカウンセリングを受けることで治療を開始したわけですから、これから先は必ず良くなっていきます。
ですが、人は日々の変化には気づきにくいです。

まして症状は骨折や傷口のように回復が明らかに見えるものではありませんから、
自分に厳しい生真面目なうつ病の人達は、自分が起こしているプラスの変化などはなかなか認めようとはしてくれません。


ですから、こうしてきちんと表にして毎日書き留め、証拠を残していくことが重要です。
やがて回復したときに、手元にある現実の記録が自分の変化と回復を如実に示してくれるからです。
こんなに頼もしいツールはないのですから、リワーク中だけでなく、うつ病を疑い始めた初期の頃から、速やかに始めてもらえたらいいのになと思っています。

 

④客観視できるようになる

俯瞰して見ることやスケーリングすることは、『客観視』の第一歩です。

無意識のまま見過ごしてきていた一日に焦点を当て、改めて見つめ直します。

~このときの「私」はどんな気分を味わっていて、何を考えていたのだろうか?~


客観的に振り返り、問いかけて、意識化します。
これこそが、メンタル疾患やアダルトチルドレントラウマの克服に欠かせない『メタ認知』です。

 

自分を落ち着いて客観的に冷静に見ることができるようになれば、自分の気分や考えに支配されて振り回されてしまうことがなくなります。
本来の自分を取り戻し、なりたい自分に成長することもできるようになり、生きやすさを感じられるようになっていきます。

 

⑤脳が活性化する

私は、必ず手で書くことをお願いしています。

時折、パソコンで綺麗に印刷してきてくれる方もいるのですが、もちろん凄いわ!と感嘆しつつも(私には、パソコンで表に色を塗るなんて神技ですから)、次回からは手書きをお願いしています。

 

パソコン操作時の手指の動作は数種類しかありませんが、触覚を駆使する手書きの動作は非常に複雑なため、脳を刺激して集中力を高めます。
また、連想する思考力を高める効果もあることが、科学的にも証明されています。

 

⑥宿題にする
カウンセリングの間に一緒に記入して、理解が得られたことを確認したら、次回までの宿題にします。

ただし、宿題はできなければできなくても構いません。

「書けなかった」という事実があるのなら、「どうして書けなかったのか?」をただ伺います。
決して責めるのではなく。

だるくて… 集中が続かなくて… やる気が起きなくて… などの理由を教えてもらうことが、
「いま」の状態をより詳細に知るための手がかりになるからです。

うつ病や不安障害などのメンタル疾患の有無によらず、自分を客観視することはとても重要ですね。

ただ流れていく日々を、過ぎ去ってしまう日常を、
その一日の終わりに振り返り、意識化してあげることはとても有意義だと思います。
丁寧で豊かな暮らし方だとも思っています。

私自身もリズム表の代替物として、毎日を手帳に書き留めています。

あなたにも継続してもらえたら嬉しいなと思います。f:id:rakuneko-naga:20191129124648j:image

一人でも多くの方が「生きづらさ」を手放して、人生を楽に楽しく生きていけるようになりますように。
一人でも多くの方の 心からの笑顔を見たい❀と願っています。

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