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自分で認知行動療法① ~認知行動療法とは?~ #8

2021年04月22日


『認知行動療法』
は、診療やカウンセリング場面で用いられている、代表的な心理療法です。
特に精神医療の領域では「薬物療法に匹敵する効果がある」として、2010年以降、健康保険の対象になっています。

「治療」であるから診療報酬を算定してよいと厚生労働省が認めた、唯一の心理療法なのです。

そのため、「詳細は知らないけれど、耳にしたことはある」という方も多いのではないかと思います。

様々な心理療法を適宜実施している私自身も、この認知行動療法は最も多く活用しています。
というのも、手法が構造化されていてかつ簡便なため、クライエントさんがカウンセリング終了後の一人の時間にも振り返って理解したり、習熟したりできるからです。
高い効果を得たいのは誰でも希望するところですが、まずは誰にでもわかりやすく、取り組みやすいものであることが必要不可欠だと思っています。


1.認知行動療法とは
「人の気分や行動は認知のあり方の影響を受ける」という理解にもとづき、認知(ものの考え方や受けとり方)のあり方に働きかけることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された短期の精神療法(大野 2016)です。

英語では  Cognitive  Behavioral Therapy  と表記されるため、CBT と呼ばれています。



2.3つの系譜
①第一世代の認知行動療法:行動療法の系譜
スモールステップで段階的にエクスポージャー(暴露=恐怖とそれに伴う回避衝動の変容を目指す認知行動療法技法)を取り入れて行います。
強迫性障害パニック障害社交不安障害に効果があるといわれていて、私自身もこれらの疾患に非常に有効だと実感しています。

②第二世代の認知行動療法認知療法の系譜
一般に『認知行動療法』というと、こちらを指します。

うつ病不安障害などのメンタル疾患の治療はもちろんのこと、
ネガティブな思考や思い込みの改善
怒りっぽい・落ち込みやすい・不安になりやすい傾向や、悩みの克服
職場や学校におけるメンタルヘルス教育
重篤な患者や被災者に対する支援
矯正施設(半官半民のPFI刑務所=社会復帰促進センター)では再犯防止『更生プログラム』
に至るまで、
精神療法の中でもとりわけ汎用性が高いという特徴があります。

私自身、これを用いたことにより、うつ病・社交不安障害やアダルトチルドレンの方々の克服を数多く見てきました。

③第三世代の認知行動療法:マインドフルネスをベースとした、体験的なアプローチ
マインドフルネスストレス低減法(MBSR)🌸
マインドフルネス認知療法(MBCT)
メタ認知療法(MCT)
行動活性化療法(BA)
弁証的行動療法(DBT)
機能分析的心理療法(FAP)

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)🌸

私は上記のうち、🌸を付した2つのみがようやく導入できたところですが、
それでもその効果は深く実感しています。


3.認知(ものの考え方や受けとり方)の違いの 具体例

例えば…
ある日の朝、出勤途中に電車が遅れたとします。

すると、同じ駅のホームで、同じ「電車が遅れている」という状況にいる3人が、
それぞれに違う受けとり方をしています。
そして、更にそこから様々なことを考えるため、抱える気分は全く異なったものになっています。

①Aさん:

あぁ、また会社に着くのが遅れてしまう。

それでさ、やっと辿り着いたって、どうせ仕事は机の上に山積みなんだ。
課長の嫌な顔が浮かぶよ。今日も残業確定だ。
俺はいつもついてない。
⇒ 【悲しい】

②Bさん:
おい、またか⁉
先週は車両故障で、今日は信号機トラブルだと?
いい加減にしてくれよ。
鉄道会社、怠慢すぎるだろ‼
⇒ 【怒る】

③Cさん:

やった、ラッキー♬
遅延証明がもらえるし、堂々と遅刻ができる。
早いとこカフェにでも入って、のんびりコーヒーでも飲んでいこう。
⇒ 【喜ぶ】


このように、受けとり方・考え方は人それぞれです。
そして、その違いが気分(感情)にも影響を及ぼし、各人の心にそれぞれのストレスをかけてしまうのです。

ですから、その受けとり方の違いに気づくことができて、より良い考え方や対処ができるようになれば、
やがてストレスによって引き起こされるであろう病気や心身の不調を未然に防ぐことも可能になっていきます。
あるいは、それ以上悪化させなくて済むようになるのです。

こうして認知行動療法は、大変重要な役目を果たしています。


いかがでしたか?
まずは「認知のあり方」について、少しでもイメージがつかめたでしょうか。
興味が湧いてきて、「やってみたいな」と思っていただけたら嬉しいです。


私自身、この認知行動療法をカウンセリングに導入するたびに効果を実感していますし、
クライエントさんからも「認知の歪みがわかった。修正できて良かった」や、
「生きやすくなった。楽になれた」などの声を、本当にたくさん聴いています。
それは私の励みにもなっていて、クライエントさん達との実際の経験を活かし、レジュメのマイナーチェンジも続けています。

レジュメは「まるで公文や学研教室の教材プリントのように、各人の進度に合わせてスモールステップで」が信条です。
クライエントさんはそれに取り組んでいくことで、スキーマ認知の歪みに気づくことができるようになります。
そして、問題解決の方法も着実に身につけて、やがて克服の日を迎えます。

こうして習得した気づきや方法は、カウンセリングが終結した後で新たに出現した問題についても、当然有効です。
つまり、認知行動療法を習得した暁には、セルフカウンセリングも可能になっていると言えるのです。

 

次回から、認知行動療法の実際について、数回に分けて書いていきます。

認知行動療法を試してみたいと思っている方、
イメージも湧かないので覗いてみたい方、
自分で学んでやってみたいと考えている方などなど…
楽しみながらチャレンジしてもらえたら嬉しいなと思います。

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一人でも多くの方が「生きづらさ」を手放して、人生を楽に楽しく生きていけるようになりますように。

一人でも多くの方の心からの笑顔を見たい❀と願っています。

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