カウンセリングの実際 ~時間・料金・見通し~ #7
初めて来談されたとき、「悩みやメンタルの疾患でずっと苦しんできたから、カウンセリングを受けてみたいと思ってはいたけれど、その現実的なところが見えなくて、なかなか踏ん切りがつかなかった」と教えてくれます。
また、「実際に受けてみようと考えているけれど、想像や見通しがつかなくて不安でためらっている」とか、最近では「オンラインや電話でも効果はあるのか」といったお問い合わせも多くいただきます。
そこで今回は、現実のカウンセリングは、
①どういうふうに進んでいくのか
②時間や料金はどのくらいか
③どのくらいの期間が必要となるのか(見通し)
という、よくある疑問について、私のこれまでや現状と照らし合わせながらお話ししていきます。
1.カウンセリングとは
悩みや疾患を抱えた人(クライエント)は、安全な空間で、安心できる相手(医師・カウンセラー)にその悩みや困りごとを打ち明け、ともに納得しながら問題を明確化し、解決や克服を目指していきます。
また、オンラインや電話の場合も、共有する部屋こそありませんが、安全性を十分感じていただきながら、安心して進めていけるように努めていて、十分に効果もあがっています。
ここでの対話は、上下関係や師弟関係のない、対等でまっとうで健全な会話そのものです。
ただし、ただ悩みを打ち明けるだけなら家族や友人にもできることですから、ここでは専門性も問われてきます。
そのためにカウンセラーは、精神分析・来談者中心療法、行動療法や論理療法、認知行動療法、ブリーフセラピー、ゲシュタルト療法、対人関係療法、内観療法etc.といった様々な心理療法と、
医学に基づく心身の状態や薬剤に関しても精通し、その時々に最も適切な心理的な援助を行っています。
カウンセラーが心から寄り添い、共感し、クライエントさんを思いやりながら話を聴く。
そして適切な質問を重ね、またその答え=思いや考えを聴く。
適切な言葉のキャッチボールと心のやり取りを続けていくことで、クライエントさんは自らの問題を明確にして、そのためにすべきことを見つけたり理解したりしながら、少しずつ「自分で」問題を解決し、悩みを克服していきます。
この「自分で」の実感こそが、軸を自分に戻し、自信をもたらし、自己肯定感を高めます。
やがて、「自分で」自分の人生を主体的に生きられるようになっていくのです。
2.カウンセリングの実際
(1)初回面談(インテーク)
①挨拶と自己紹介をします。
私の場合、
「はじめまして。カウンセラーの 永島です。よろしくお願いします」
のような感じで、とってもシンプルです。
②カウンセリングについての簡単な説明をします。
「こんな小さな部屋(あるいは、電話・オンライン)ですが、ここで語られることは、絶対に外へは漏れません。
ただし、命の危険を感じた場合には、カウンセリングを中止して主治医やご家と共有することもあり得ます。
そういう危険がない限りは、たとえ親御さんや上司が同行されていても、私は勝手に喋りません。
必ず事前にあなたに確認し、あなたが話してもいいと承諾したことだけしか話しません。
カウンセリングは、誰にもどこにも漏れない安全な空間で、安心して何でも話すことができる居場所ですからね」
③カウンセリングに来ようと思った経緯を丁寧に伺います。
「カウンセリングというと、未だ垣根が高くてよくわからない不安な場所だったり、あるいは胡散臭い場所というイメージが強いと思います。
それでもこうして来てくれたのには、きっといろいろなことがあったんですよね。
そのことや、いろんな想いを話してください。
どこからでも構いません。
上手に話そうとか、順番にきちんと話そうとか考える必要は全くないので、大丈夫です。
安心して話してみてくださいね」
そして私はペンを持ち、話してくれたことを書きながら、また聴き進めます。
私の記憶はとても曖昧ですから、私はしっかりと記録に残します。
書くことについては、
「ただじっと見つめられたり聴き入られたりするよりも、ずっと気が楽だった」と言われることが多いです。
また、「以前のカウンセラーは次の回には全然覚えていなくて、まるで初めて聞いたみたいな顔をされて悲しかった」と聞くこともあり、同じカウンセラーとして、申し訳ないことだと思っています。
④カウンセリングを行う目標を明確にする。
勇気を出してカウンセリングを受けたということは、もう既に自分自身で変化を起こしているのです。
それを伝えた上で、カウンセリングを受けることで更にどんな変化を起こしたいか、つまり「どうなりたいのか」を考えてもらいます。
未来の自分を明確にすることで、過去の自分にケリをつけ、今の自分を大切にして真摯に向き合うことができるようになるからです。
もちろん、この目標は曖昧で漠然としていても構いません。
それに、このとき語った目標が、途中で別のものへシフトすることはとても多いです。
実際、合意してカウンセリングを終結する場合、お互いに想像もしなかったような素敵な光景を前にしていたりします。
私は、カウンセリングはドミノ倒しだと思っています。
私たちカウンセラーがドミノの初めの1枚をちょんと押すだけで、誰も想像できなかったような素晴らしい絵が広がっていきます。
その描かれた絵を一緒に見ることができる。
その絵を見たクライエントさんの笑顔も見ることができる。
そうした場面に立ち会わせていただけることこそ、カウンセラーの醍醐味であり、幸せだと実感しています。
(2)時間、料金、2回目以降と見通し(回数)
①時間と料金
私が過去に勤務していたところですと、
クリニック併設のカウンセリングルームは、それぞれ50分/8,000円と25分/4,000円
私設のカウンセリングルームは、60分/10,000円または90分/15,000円 でした。
他のところもリサーチしましたが、50分/8,000〜12,000円ほどが相場のようです。
当ルームは1時間/8,000円となっています。
高いと感じる方も多いと思います。
実際、安いものではないと、私自身も感じています。
ですが、抱えているのは、長年一人で苦しみ続けていた悩みであったり、もしかしたら墓場まで持っていこうと思っていたほどの秘密。
それを、誰にも漏れる恐れのない安全な空間で、日常場面では何の関係性もない他者に安心して語ることができる。
そして、それらの悩みや苦しみを改善・克服するためには、クライエントさん本人の経験則や書物による学びだけでは対処しきれない、豊富な知識と経験が必要なことが非常に多いのです。
そのため、カウンセラーは日々研鑽を積んでいます。
書籍や文献を読み漁ったり、様々な研修を受けたり、自身も信頼信用のおける教授にスーパーバイズを受け続けていたりします。
だからこそ…
大切なあなたと共に克服を目指すために投資しながら培ってきた『専門性』を軽視しないでほしいのです。
そして、何より一番大切な「あなた自身の心」を安く見積もらないでほしいと願います。
無料の相談はあくまでも一部分の相談ですし、安いところは安いなりだと、私は思っています。
②ペース
そうは言っても、やはりカウンセリング料金は、決して安いものではありません。
そして、日々の生活も抱えていますから、時間にも余裕があるわけではありません。
誰にとっても「時間とお金は大切」です。
ですから、「カウンセリングは受けたいけれど、そんなにお金も時間もかけられない」のであれば、それも遠慮しないで話してみてください。
ペースで調節することもできるからです。
例えば、カウンセリングの頻度を月に1度だけにしたとして。。
次回まで1か月も空いてしまうのならば、その間も十分自分と向き合えるような、変化のために必要なホームワークを一緒に考えて決めることもしています。
③見通し
全くの私見ですが、12回前後で終結する方が多いように感じています。
と書いてるそばから、そういえば あのクライエントさんは24回目で終結したとか、ライフワークだと言って永年通うという方もいる、なんて思い出したり。
🌸例えば、うつ病のため初診直後にお会いして、すぐに休職を勧めた方の場合。
発症のきっかけは会社の人間関係でしたが、昔から対人場面が苦手だったそうです。
次第に、母子関係に問題を抱えたアダルトチルドレンだったことが判明。
初めは泣いてばかりでしたが、5回を過ぎたころから涙を流すことはなくなりました。
その頃から本格的なリワークも開始。
実はリワークでも内面に関わる自己理解が重要です。
特に対人関係=断ることが苦手で引き受けてしまうような人の場合、いくら外で必要時間を過ごせるようになっても、どんなに作業効率が上がったとしても、根本の問題が解決していなければ復職後も同じ悩みを持ちかねないからです。
やがて、無事に復職を果たし、その後も順調に勤務は続きました。
母親とも適度な距離が取れるようになり、そのまま保っていられることもしっかり確認・共有した上で、24回目に終結しました。
もちろん、抱えてきたものも目標とする状態も、クライエントさんそれぞれで全く異なりますから、個人差は大きいです。
ですので、本当に大雑把な所感で恐縮ですが、私の場合は5〜20回程度で合意の上終結するのが多いかな。平均的といえば12回あたりが平均的なのかな というところです。
以上、私の場合のカウンセリングの実際についてお話ししてきましたが、イメージはつかんでいただけたでしょうか?
怖がらずに、気軽にカウンセリングを受けてみてほしいと思います。
一人きりで暗いトンネルの中をさまよわないで、どうか伴走者(カウンセラー)を求めてほしいと思います。
カウンセリングの力を信じてほしい❀と願っています。
さて、次回からは、代表的な心理療法である『認知行動療法』について、詳しくわかりやすくお話していきたいと思っています。
どうぞ、お楽しみに。