認知行動療法で社交不安障害を克服したB子さん(後編) #14
社交不安障害克服のために認知行動療法に取り組んでいるB子さんは、週1回ペースのまま頑張っています。
【第5〜6回】
「今日は学校で課外授業だったから」と春らしい私服姿だが、マスクは着けたまま。
◆ホームワークについての報告(2週間、同宿題を継続中)
①「4限までいて昼食は食べずに帰る日」は週5で達成できた。
②「下校時、ベンチに座ってソイジョイを食べる」も毎日できた。
●初めは、マスクを外すだけでドキドキソワソワしたけれど、そのときは練習していた呼吸法(☞#6不安の対処法)をやって乗りきった。
呼吸法って本当に効くから、助かった。
そうしたら、だんだん不安は減ったし慣れてきたし、食べた後もマスクを外したまま家まで帰れるようになった。
《やったー!》って気分。
●昨日の朝は、駅までのバスの中でマスクを外してみた。
すごくバクバクしたけど、降りるまで外したままでいられた。
《ステップアップしたい!》って思ったから、頑張った。
●Nちゃんが「メンタルで入院してたことがある」って話してたときに周りを見てみたら、
みんな「へー」って言うだけで、誰も引いてなかったよ。
カウンセラーさんが言ってたとおり、観察するって大事だね。
●Nちゃんだけに思い切って「私のマスクは花粉症のせいにしてるけど、本当は人が怖いからなんだ。汗出るし」って打ち明けたの。
そうしたら「私も病院通ってるし、良くなるまでしてればいいじゃん」って言ってくれて、嬉しかった。
今までは《顔が広い子と付き合いたい》って思ってたけど、
今は《顔なんて広くなくていい。落ち込んでるときに慰めてくれたり支えてくれる子、本当に心配してくれる子を大事にしよう》って思うようになった。
▶丁寧にコンプリメントした後で、次回までのホームワークを話し合い、以下のとおり決めた。
1)次回、待合のソファでマスクを外す。ただし、着けたくなったら我慢しないで着けること
2)Nちゃんに、どうして病気について人に話せるようになったのか尋ねてみる
3)眠る前にプリクラを撫でながら、1枚につき1回以上「B子ちゃんが一番かわいい」と、広角を上げた笑顔で言う
4)ゴールデンウィーク中、自宅近くの公園で10分間、決めた音楽を聞いて過ごす。他の曲が聞きたくなったら、変更してもかまわない
5)下校途中にソイジョイを食べることは続ける
●「また褒められたいから頑張る。嬉しいもんね」と言って、元気に退室した。
【第7回】
制服姿で、マスクはしていない。
驚いた私が褒めると、満足そうな笑みを浮かべた。
●宿題は全部やった。
他にも『マスクを外すための4段階メニュー』を自分で開発して、練習した。
それを2日ずつ進めて、とうとう昨日、家からマスクをしないで登校できたの!
けど、それに気づいて質問してきたのはNちゃんだけで、他の子はみんなスルーだった。
《もっとイジってよー》って思って、世の中の厳しさを知ったね。
今は《よくやった、自分!》って思ってる。
●だけどね、顔に自信がないのは全然変わらない…
▶『思考記録表』を共に作成。
思考を掘り下げ、スキーマ(絶対的信念)(☞#11認知の歪み)を明確にした。
▶ホームワーク
1)毎晩、就寝前に鏡を見て「B子ちゃん、かわいい」と、笑顔で声に出して10回言う
2)登校したら、友達と一緒に昼食を食べてから帰る
【第8回】
今回もマスクはしていないため、丁寧にコンプリメント。
●ホームワークは「午前中出席できて、友達とお昼を食べたら帰っていい」だったのに、頑張って6限まで居ちゃった。
そうしたら疲れて、水・木って登校できなかった。
今日は半日だったから《行けるぞ!》って思えて、マスクも持たずに登校できた。
やっぱり、まだ無理はダメなんだね。
▶確実に進歩していることを共有。
二人で決めた目標は焦らず一つずつ着実にこなしていくことを約束
▶『社交不安障害』について再度心理教育を実施し、無理することのデメリットについて確認
▶進歩と自信を実感できているため、次回のカウンセリングは2週間後に延ばしてみることで合意
【第9回】
前回までの2回のカウンセリングで外すことができていたマスクを、再び着用している。
●月曜日の朝、電車の中で痴漢に遭って、怖くて途中で降りたの。
涙がぼろぼろ出た。
少し落ち着いてから学校に行ったけど、1限中にまた涙が出てきちゃって。
うつ伏せで頑張ったけどダメだったから、途中で帰った。
●今週は三者面談週間で午前中だけだから、またマスクは着けちゃったけど、毎日登校できた。
下校のときは友達と一緒に帰れて、遊ぶこともできたからよかった。
帰りのバスを降りたら家まで5分くらいだから、そこは毎日マスクが外せるようになった。
行くときも、気分がいい日は学校に着く直前まで外すことができている。
でも、学校ではまた外せなくなっちゃった。
マスクはストレス。本当は外したい。
外せないのは、自分の顔に自信が持てないことよりも自信を下げる。
外せたり外せなかったりで、イライラする。
こういう自分が大っ嫌い。
▶痴漢というショッキングな出来事の後も頑張って登校したこと、マスクは着けていても全日登校できたことをコンプリメントし、成功体験として強化
▶認知行動療法の『根拠と反証』について説明。
ホームワークに入れて進度を上げることを希望された。
▶『不安について』(☞#5)と『回復過程について』の心理教育を行う。
不安はゼロにはならないし必要でもあるもの、回復は右肩上がりの一直線ではなく波を描くこと を図表を用いて説明し、理解を得た。
▶ホームワークは続行とし、カウンセリングペースも2週間のままとしてみることで合意
退室時、「私も心理を勉強したい。絶対に大学行きたいから、出席日数と評価点を増やすって決めた」と生き生き語った。
【第10回】
マスクをしていない。
●今週は、全部登校できた。
でも、マスクを外せたのは今日だけなんだけどね。
▶『マスクはしていても出席できたこと=成功体験』を強化するため、一緒に『思考記録表』を作成。
『反証』に多く時間を割いて完成させたあと、「私、よく頑張った」と評した。
▶認知行動療法は最終段階の『適応的思考と気分のスケーリング』へ。
▶ホームワークを話し合いで以下のとおり決める
1)『思考記録表/7コラム』を1エピソードについてだけでいいので、自分一人で完成させてみる
2)マスクをしていても、遅刻や早退をしてもいいので、とにかく毎日登校してみる
3)7月のテストの点数を上げたいので、数学と英語の先生に補習を依頼する
退室時、「先生に言うの、めっちゃ緊張するー。でも、イヤとは言わせない自信あるんだ」
と笑った。
【第11回】
マスクはしていない。
●この前のカウンセリングから2週間、毎日マスクを外して登校できた。
全クラス出られたから、不足授業数はクリアできた。
友達とお昼を食べたり、プリクラ撮ったり、思いっきり走れたりするから、もうサイコー!
お母さんもウキウキしてるのがわかるから、気持ちがすごく楽になった。
先生たちに補習もお願いできた。
数学なんて朝の授業前に1時間と、放課後2時間も勉強してるんだよ。
●この2週間は奇跡だー。今年一番頑張った! って思う。
▶丁寧に、丁寧にコンプリメント。
終結も視野に話し合うと「まだ。自分の顔に自信が持てないっていう問題が残っている」と、自ら問題を明確化した。
▶共に『7コラム』を作成すると、
「私、本当にすっごくすごーく凄く!変われたんだね。
自信がないのはまだまだ大きいって悲観してたけど、実は50%だった。
ってことは、50%も自信が持てるようになってるってことだもんね。
なんか嬉しい」
と、変化した自分を客観的に認めて喜んだ。
▶ホームワーク
1)『7コラム』作成
2)「いま」を楽しむ。自分なりに、無理をしないで、等身大に
▶次回のカウンセリングはさらに間隔を空け、1ヶ月後に延ばしてみることで合意。
【第12回】
マスクはしていない。
●今月はマスクをずっとしていない。
●夏休みに入って夏期講習で忙しいけれど、友だちはまた増えた。
担任からも「本当はダメだと思ってたんだよ。よく頑張ったな」って褒められた。
●受験生だから、オープンキャンパスに行ったり、勉強したりしなきゃいけないんだけど、
高校生活も今年で最後だから、友だちとランチとか花火とか…
今までマスクのせいでできなかったことをたくさん楽しみたい。
もう、自分の顔の悩みも、マスクに比べたらちっちゃいことかな。
ありんこだね。
▶『認知の歪み表』から、自分のスキーマを把握する。
▶認知行動療法の最終章『認知の3つのレベル』へ入る。
新しい信念は
「人の格付けなんて要らない。人にはランクなんてない。
人を信じて、自分を信じることが一番大切」
へ、修正を果たした。
▶合意の上、終結。
いかがでしたか。
B子さんも本当によく頑張りました。
人は、変わりたいと願って行動に移したとき、既に変化を起こしています。
カウンセラーは師ではなくて、伴走者。
自分を信じ、まずは動いてみてください。
B子さんの終結の日の言葉を❀
〜終わっちゃうのは寂しいけれど、いつかどこかで、先生とおんなじ立場で再会したい。
夢は叶うんでしょ。だったら、絶対にまた会えるよね〜
心から感謝を込めて。
いつもありがとうございます。
一人でも多くの人が「自分の人生」を楽に、楽しく幸せに生きていけますように。
一人でも多くの方の、心からの笑顔を見たいと願っています❀
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