アダルトチルドレン

マルトリートメントとは① 【チェックリスト付き】 ~アダルトチルドレンの連鎖を断ち切るために~ #22

2021年06月27日

 

『マルトリートメント』という言葉を知っていますか?

「虐待、酷使、冷遇」を意味する英単語ですが、主に Child Maltreatment (CM) として『不適切な養育』と訳されています。
『児童虐待』とほぼ同義とされています。

児童虐待防止法では、児童虐待を ①身体的虐待 ②性的虐待 ③ネグレクト ④心理的虐待 
の4つのカテゴリーで定義し、
特に④心理的虐待には、以下のようなことも含まれるとしています。

・言葉による脅かし、強迫
・子どもを無視したり、拒否的な態度を示す
・子どもの心を傷つけることを繰り返し言う
・子どもの自尊心を傷つけるような言動
・他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする
・子どもの面前で、配偶者やその他の家族などに対し暴力をふるう
など

さらに、世界保健機関(WHO)では、厚労省の4つの定義だけではなく、もっと広義に、子どもの健康や育ちや生存権・発達に害を及ぼすものはすべて『マルトリートメント』と定義しています。


それでは実際に、マルトリートメントには具体的にどんなものが当てはまるのかを見ていきましょう。

以下に、小児科専門医・子どものこころ専門医であり、脳科学者でもある友田明美氏の著書『脳を傷つけない子育て』より引用のチェックリストを挙げますので、ぜひやってみてくださいね。

マルトリートメントのチェックリスト

1.心理的マルトリートメント
①子どもを兄弟姉妹と比較して批判したり、親戚などの前で笑いものにする
②子どもの苦手なところが気になり「あなたは何をやってもできない」などと言う
③頭に血が上って、大声で怒鳴ってしまう
④「あなたは女の子だから」などと、性別で子どもの行動を制限する
⑤親の気分によって、同じ行動でも、子どもを叱るときと叱らないときがある
⑥どんなことでも基本的には、子どもの意見を聞かずに親が決めてしまう

2.面前DV(心理的マルトリートメント)
①子どもの前で夫婦喧嘩をする
②子どもに夫(妻)への文句を話す
③夫婦間での暴力がある
④夫婦間に支配関係があり「誰のおかげで暮らせているんだ」などと言ったりする
⑤人前で妻(夫)を「ダメなやつで…」などとバカにする
⑥大切にしている物を、夫(妻)が壊す
⑧子どもに夫(妻)への文句などを言わせる

3.身体的マルトリートメント
①子どもが言ってもわからないときに、手加減をして叩く
②子どもは言葉だけで理解できないため、体罰は必要だと考えている
③子どもが約束を守れなかったときなど、罰として食事を抜く
④食べ残しは禁止しているため、子どもが「おなかいっぱい」だと言っても無理やり食べさせる
⑤子どもが体調不良を訴えても、無理やり学校や塾に行かせる

4.ネグレクト
①仕事や家事が忙しく、子どもと触れ合う機会がほとんどない
②子どもが泣いても、さまざまな理由で無視する
③子どもにスマートフォンを渡して、おとなしくしてもらうことが多い
④子どもを家に残して、数時間外出する
⑤忙しくて食事を作れないことが多く、子ども自身でカップ麵やレトルトなどで済ませる 
ことが多い
⑥子どもが体調不良を訴えても、病院や薬局へ連れていかない
⑦子どもに必要な予防接種をさせない

5.性的マルトリートメント
①子どもが嫌がっているにもかかわらず、お風呂の後などに裸で過ごす
②嫌がる子どもと一緒にお風呂に入る
③夫婦の性的な関係を子どもに話す
④性的な映像や雑誌などが、子どもの目に触れるところに置いてある
⑤子どもの裸の写真を撮る
⑥親の性器を子どもに触らせる
⑦子どもを性的な対象として扱う                           


いかがでしたか。
もしかしたら、日常の会話の中で何気なく言ったりやったりしていることもあったかもしれません。
「手加減して叩くのもダメなの? ちょっと厳しすぎやしませんか?」という疑問を抱いたり、衝撃を受けたりした方も少なくないのではとも思います。

正直、私も初めはそう思いました。
そして、過去3男児の子育てにおいて当てはまっていることもありましたから、いまさらながら落ち込みました。
「ごめんなさい」と大いに反省もしました。
けれど、時すでに遅く… 3人とももう30歳前後のイイオトナです。

ですから、自分のことを棚に上げて非難したり責めたりするつもりは毛頭ありません。

それに、子育てをしている人のほとんどは、必死に頑張っています。
自分の子育てが児童虐待に近しいかもしれないなんて思いもせず、ただただ必死に。
「しつけや教育のためには、ときに厳しさも必要。
 この子が大人になったときに苦労しないで済むためだもの」などと考えて。
忙しく慌ただしい日々のなかで、少しでもおいしいものを食べさせたいとか、好きなことをやらせてあげたい、学ばせたいとか…
子どもとの時間もとりたい。だけど、なかなかとれないとか…
本当に一生懸命です。


ただ、そうして良かれと思ってやっていたことがマルトリートメントだった場合、
そしてそのマルトリートメントの頻度や強度が増したとき、
それは子どもたちに確実に負の影響を与えてしまうのです。
児童期のマルトリートメントは、子どもの愛着形成を阻害し、その慢性反復性トラウマによって実際に脳にダメージをもたらしてしまっていることが明らかになりました。
脳が器質的・機能的に変化してしまうことが、脳研究によってすでに明らかになっています。
これについては、次回以降でお話しします。


そして、絶対に「毒親」を擁護などするつもりはありませんが、その昔、怒鳴る・叩くは、しつけや愛情の一環として疑問視されなかった時代がありました。
実際に、1933年に制定・施行された(旧)児童虐待防止法では、儒教的 家父長的 家族制度に基づく「私物的 我が子観」があり、幼い子どもたちがその犠牲になり続けました。(厚生労働省、子ども虐待の援助に関する基本事項第1章より)
まさに、現在アダルトチルドレンとして苦しんでいる人たちの元凶である「毒親」がその犠牲者でもあったのです。
「親の私物」として扱われるのが当たり前でしたから、その犠牲者たちが構成する学校や社会においても、体罰や厳しい指導は「愛の鞭」であり、しつけや教育として「当たり前」にまかり通っていました。

そこから、スーザン・フォワードにより著された『毒になる親、一生苦しむ子供』が1999年に翻訳され、ようやく「毒親」の言葉が流布し始めたのですが、
そのころ、その人たちはちょうど子どもの親になり始めていたのでした。
しかも、この親たちも前述のように脳の器質的・機能的変化まで備えてしまっていたとしたら…

虐待はこうして連鎖したんだろうと考えます。


「不適切な養育」であるマルトリートメントは、「虐待」とほぼ同義です。
ですから、『マルトリートメント・チェックリスト』に目を通してみて、厳しすぎるのでは? と疑問や衝撃をおぼえたのならば、その不適切なところを改善していくことが絶対に必要です。

気づき、努力することで改善できたなら、それは本当に素晴らしいことです。
しかし、もしも「自分は虐待を受けていた」とか「自分はアダルトチルドレンだ」と確信していたり、改善しようとしても どうしてもマルトリートメントをしてしまうと悩んでいるのであれば、
ぜひとも、専門家に相談したり心理治療やカウンセリングを受けて、自分自身でその連鎖を断ち切ってほしいと願います。


脳には可塑性があります。
愛着の再形成も可能です。
多くの専門家や臨床家が、豊富なエビデンスを報告しています。

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大丈夫です。
気づいて、知ることができたんですから。
マルトリートメントの、虐待の、アダルトチルドレンの、毒親の、「世代間連鎖」は断ち切れます。
そして、やがて「居心地のいい安心できる安全な場所」を作り上げていってほしいと願っています。

一人でも多くの人が「自分の人生」を楽に、楽しく幸せに生きていけますように。
一人でも多くの方の、心からの笑顔を見たいと願っています❀

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